ヨーヨーの「すべり」


 「トリック中のヨーヨーまたはストリングがスムーズに動くかどうか」その良し悪しは「すべり」という言葉で表されます。動きが詰まることなくスムーズにプレイできるなら「すべりが良い」、逆に詰まってトリックに支障が出ているなら「すべりが悪い」となります。ストリングプレイ用のヨーヨーにとってこの「すべりのよさ」は最も重要視されるポイントです。


すべりが悪くなる原因

①ストリングと軸受けが固定されている 

 ボールベアリングモデルのヨーヨーを使用する場合、ベアリングに対しストリングはシングルループ(1重巻き)で掛けられます。 これは「実質の軸」であるベアリング外周に掛けられたストリングがヨーヨーの動きに対しスムーズに動けるようにするためです。

 

 ためしに手元のストリングプレイ用ヨーヨーを「3重巻き」にしてプレイしてみてください。ストリングがベアリングに固定されるためすべりはとても悪くなるでしょう。ベアリング外周とヨーヨー本体の関係はボールによって切り離されていてもベアリング外周とストリング先端、マウント部のストリングは「固定軸」と同じ条件でしかないので固定されることは動きを大きく妨げるのです。

 

 この「固定現象」は重ね巻きをしなくても発生します。 例えばストリングのヨリが極端にきつい場合。 ストリングはベアリング外周を締め付け、自身をベアリングに固定してしまいます。

 

 プレイ中のヨリ管理はスラックやウィップを適切に行うためのみならず、すべりが良い状態をキープする意味でも重要なのです。 また、ベアリング表面が汚損していてもすべりは悪くなります。

 

 酸化(見た目がくすんでいる)していたり、サビが出ていたり、オイルが付着していてもスムーズさは失われてしまいます。ベアリング表面のコンディションは見た目の良し悪しだけでなくプレイにも影響をおよぼすのです。軽い酸化・汚れはパーツクリーナーや金属に対応できるポリッシュ(楽器用ポリッシュなど)を使うことで除去できます。

 

 

②ストリングがレスポンスに触れている 

 レスポンスはその高い摩擦抵抗を利用してストリングを巻き取る部位です。リターン以外のタイミングでストリングが触れた場合、当然ストリングの動きを阻害します。またボディに触れた場合もレスポンスほどではないにしろ、すべりは低減します。

 

 

③ストリングが重なっている 

 「トラピーズ」状態のヨーヨーの軸上には「掛けられているストリング先端」と「マウント位置のストリング」という2本のストリングが存在します。このときストリング先端のループの上に重なるようにもう一方のストリングが乗っているとスムーズさが失われ、すべりが悪くなります。

 

 時として曲面加工ベアリングが「すべりの悪いベアリング」と称される理由はここにあります。ストリング同士が重なりやすかったり、多重マウントをした際に中央に寄りすぎてしまう。重なりあっていなくとも、横並びでぎゅうぎゅう詰めになればストリングはスムーズに動くことができません。

 

 「なんの特徴もない標準ベアリング」と誤解されがちな「フラットベアリング」はストリングが乗る面積が広いのでこの重なりや隣接によるすべり低減が起こりにくいという強みを持っています。反面、②の接触による低減が起こりやすいベアリングでもあります。

 

 そういった曲面とフラット両方のメリットを伸ばし、デメリットを取り払うことをねらったのがセンタートラックベアリングです。とはいえセンタートラックも人によっては「中途半端」といわれる…このあたりは相性の問題ですね。

 

 

④手が汗ばんでいる 

 ベアリングと同じく手や指もストリングが掛かる重要な部位です。当然、汗ばんでいる状態ではスムーズさが失われます。ヨーヨーが万全な状態でもすべりが悪いと感じる場合、自身の手に問題がある可能性を疑いましょう。プレイヤーには手を清潔な状態に保つ、パウダー配合の制汗剤を塗布する、手袋をつけるといった対策が求められます。


プレイヤーが気をつけてこそ

 このようにすべりが悪くなる原因は様々で、かつ複合的。すべりの良し悪しはヨーヨーだけに依存するものではなく、プレイヤーのケアにも大きく左右されるのです。

 意図的にすべりが悪い状態にしたワンスター。ストリングのヨリはきつく、ストリング同士は重なり合い、指のコンディションも悪いとサイズCでもここまですべりが悪くなります。


 ベアリングの交換(または清掃)もせず、ヨリにも無頓着で、ベタベタの手のまま、ストリングはお古を使いっぱなし。そんな状態で使ったヨーヨーに対し「すべりが悪い」なんて評価を下すのは…誤りであることがわかってもらえると思います。

 

 また、プレイの質によってはヨーヨーがもつポテンシャルを限界まで引き出すことも可能です。

 

 たとえば面積的に不利なサイズAで不都合なくプレイできている人はヨリの管理、重なりの少ないマウント、多重マウントを避けたトリック選び、すべりを促す糸運びといったケアを無意識のうちに行っているのです。

 

 よく話題になる「引き戻しヨーヨーでプラスティックウィップができるかどうか?」と似たお話です。初心者からすれば無理ゲー的なことでも、ヨーヨーのコンディション分析力とストリングテンションをコントロールする実行力を持つ人であれば難なくこなせます。

 

 いわばヨーヨーとのコミュニケーション能力。これを培っていけば「とにかく大きいベアリングで広いギャップじゃないと不安」なんてことはなくなります。

 

 ぜひこの機にヨーヨーとのつきあい方を見なおしてみてください。すべりに不満を抱えていたヨーヨーが、急にすばらしいヨーヨーに見えてくる…かも?